3月某日

静岡は次郎長・エスパルスの清水駅に降りて、ひなびたターミナルからバスに乗る。
地方都市特有の人気のない大通りを、港の匂いを感じさせつつ走りつづける。
老人の多い客達をどんどん吐き出して、しまいにゃ私一人ではないか。
水木しげるのマンガで、オバケ・妖怪・幽霊しか乗っていない最終電車の話があったのを思い出す。

岬に向う一本道の両側には、色とりどりの怪しげな看板の並ぶ。
「サムライ用品ござる堂」「ウロコ倶楽部」「日本夜光の会」 「ツーリスト・オフィス ケキャール社」 … 船を造らなくなって久しい造船所。 海の方にそそり立つ鉄鋼の魔人。 それは心地のよい悪夢の町。 街でなく、あくまでいなたい「町」。 ヤバイ、私はもう彼の妄想の町に引きずりこまれている。
この荒涼として、一ツ目ウサギやらラーメンの出前をする旧式ロボット、ミイラ琵琶法 師、怪しげな海の生き物達が跋扈(ばっこ)する「逆柱ワールド」に・・・・。 (「ぎゃくちゅう」でなく「さかばしら」と読むのじゃよ。)


そう、私は不世出のマンガ家・逆柱いみり先生に、現在制作中の我がメトロファルスの ライヴアルバムのジャケットの画をお願いしに、はるかこの地までたどり着いたのだ。 『千の千尋…』なんて鼻くそポイさ。氏の『MaMaFuFu』をバクッた、おっとそりゃ言い 過ぎか、インスパイアされたのは歴然よ。
“顔なし”とか豚の頭とかね。 ま、それはともかくディズニー・ランドの対岸にある究極のアジア&レトロ&ブキミ・ テーストを醸し出す「逆柱わーるど」に皆いらはいな。
このままじゃ日本中が薄ら寒いファンシーもんとアジア産100円ショップもんで、埋め 尽くされてしまう。それこそ悪夢ぢゃないか。

 

pagetop▲